10位から2位迄の一覧

TV時代劇ベスト10(その4)


 5年ほど前から、TVを見なくなり、2011年7月24日にアナログ放送が途絶えたのが決定的となり、TVとのお付き合いが全くなくなってしまいました。

 しかし、それまでに出会った数々の素晴らしいTV番組は、小生の人格形成に少なからぬ影響を与えており、ここに感謝の意味を込めて、この半世紀のTV鑑賞報告をさせていただきたいと思います。

 前回は、TV時代劇ベスト10の第4位及び第3位を報告しましたが、

 今回は、第2位を報告します(番組タイトルの後に、Wikipedia等の紹介サイトのURLを設けておきました)。


第2位 「清左衛門残日録」(1993)(参照先

(1)概要

当時、NHK及び民放共に連続時代劇枠が消滅又は激減していました。

 NHKの時代劇担当スタッフは強い危機感の下、まだドラマ化がされていなかった藤沢周平の原作に目をつけ、「腕におぼえあり」(1989)を皮切りに、2000年代半ばに至るまで、TV時代劇だけでなく広くTVドラマ史に残るであろう傑作が制作され続けました(NHKアーカイブス)。


 「腕におぼえあり」は、藤沢周平の「用心棒日月抄」を原作に、海坂藩らしき東北の小藩の内部抗争に巻き込まれた青江又八郎(村上弘明)が、最愛の妻(清水美沙)を置いたまま脱藩。

その後、青江又八郎は、江戸に出て用心棒稼業をしながら、藩の追っ手(必ず、技をもった剣客が含まれる)と死闘を重ねたり、藩の美人隠密(黒木瞳)と情を交わしたり、と「腕におぼえあり」は非常に面白い本格時代劇でした。

 が、主人公の村上弘明のあの長身から刀を振り下ろす大根切り剣法(今は違いますが)に目を覆い、黒木瞳の時代劇演技もぎこちなく、主演の2人は顔だけが取り柄で(それで十分なほどの美男美女ですが)、ひたすら脇役(渡辺徹、風吹ジュン、坂上次郎)の芸達者に支えてもらっていた印象が残っています(繰り返しますが、それでも、本作は面白い)。


 「腕におぼえあり」に引き続いて「はやぶさ新八御用帳」(1993、平岩弓枝原作)を、私は楽しく観ていたと記憶していたのですが、実はこの両作の間に「清左衛門残日録」(1993、藤沢周平原作)が放映されていたことに長い間気が付きませんでした。

 当時、何故、「清左衛門残日録」だけ見ていなかったのか思い出せません。

 「腕におぼえあり」は、主演の殺陣と演技が前述したような状況でしたが、それなりにカッコよかった村上弘明と若く美しい黒木瞳のコンビが時代劇としては新鮮で楽しめたところ、次の「清左衛門残日録」は新鮮味の全くない仲代達矢では食指が動かんということであったのかもしれません。


 しかし、「清左衛門残日録」が実によくできた時代劇であるとの評判が流布していることを知り、いつか「清左衛門残日録」を見てみたいと思っていました。

 そして、10年以上たってから、ようやくDVD化されたのを機に見たところ、完全に嵌ってしまいました。


(2)物語

これも海坂藩らしき東北の小藩で、先代藩主のころから長年、御側御用人(おそばごようにん)(今でいえば、社長の秘書室長)を務めていた三屋清左衛門(仲代達矢)が、先代の藩主の死去を契機に、家督を息子の又四郎(赤羽秀之)に譲り、藩が用意した、こじんまりしながらも瀟洒な屋敷で、息子一家と共に隠居するところから物語は始まります。

 清左衛門は、愛妻は数年前に亡くしたものの、まじめ一筋の又四郎、美しく明るい嫁の里江(南果歩)と孫に囲まれ悠悠自適の余生を楽しむつもりでした。

 しかし、まだ町奉行として現役で頑張る盟友、佐伯熊太(財津一郎)が持ち込む庶民の喜怒哀楽溢れる種々事件に一汗かき、藩の保守勢力の朝田筆頭家老(鈴木瑞穂)と藩の改革勢力の中老の遠藤治郎助(御木本伸介)との対立による内紛に巻き込まれるという落ち着かない日々が続きます。

 それでも暇な日々、清左衛門は、己の人生を振り返り、かけがえのない何人もの友(河原崎長一郎、佐藤慶、他)に対する悔いの残る記憶が悪夢に蘇り、毎度後悔の念に苛まれます。

 その清左衛門に、佐伯熊太が行きつけの料亭「涌井」の女将であるみさ(かたせ梨乃)を紹介しますが、2人は互いに一目ぼれするも、身分の違いもあり、思いを伝えられないままの淡くも煮え切らない恋のやり取りが続きます。


(3)スター達

〔 仲代達矢 〕

主演の仲代達矢が素晴らしい。

 仲代達矢は、黒澤明監督の「七人の侍」(1954)の通行人の浪人役でデビュー、その後も、黒澤明監督の「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」「影武者」「乱」、小林正樹監督の「人間の条件」「切腹」、山本薩夫監督の「華麗なる一族」「不毛地帯」「金環食」等の最も良質な日本映画の大作で主役・準主役を張ってきた、押しも押されもしない名優として知られています。


 仲代達矢は一見演技派のようですが、「人間の条件」「切腹」の汗まみれで匂わんばかりの兵隊や浪人役に代表されるように、どちらかといえば体臭がむせ返るようなワイルド派、演技といえば「用心棒」「人間の条件」の頃からほとんど全く変わらぬワンパターンで、私は長い間、何故、仲代達矢が名優として評されるのかよくわかりませんでした(「影武者」は勝新太郎で見たかったと今でも思います)。

 しかし、「清左衛門残日録」を見て、仲代達矢は演技派俳優ではなく、魅力ある稀代のスターであることがよくわかり、私は仲代達矢を見直しました。


 清左衛門は、今で言えば、定年にはまだ少し間がある時期に隠居しており、完全に老成しているわけではなく、御側御用人という要職を務めあげた知性と良識を併せ持つ文人系武士としての魅力に加えて、数年前に妻を亡くしたまじめ一徹の男やもめながら、男としての魅力もまだまだ十分に残っており、嫁の里江(南果歩)、女将のみさ(かたせ梨乃)、みさの叔母の類(浅丘ルリ子)その他清左衛門の人生に関わる美女たちが惹かれていきます。

 また、清左衛門は、武芸のたしなみは人並み以上にあるものの、寄る年波もあり、あまり強いわけではないという設定がよく、それでも、筋を通さねばならないときは不安を押し隠して堂々と立ち向かうという男気をもっています(かつての手練れが、寄る年波と長年のブランクによって、腕がめっきり衰えたことを自覚しながらも、敵に立ち向かうという設定は、藤沢周平原作のおなじみの設定ですね。例えば加藤剛の代表作「残月の決闘」(1991)が典型です)。

このように清左衛門は、役者にとっては非常に難しい役どころです。


 仲代達矢は、既に60代で、かつての荒々しいむき出しの野性的な雰囲気が後退し、落ち着いた初老の雰囲気を地で醸し出す一方、それらが絶妙に入り混じって男としての品のある色気が漂っており、このドラマでは、他の俳優にはないオーラを発散しています。

 女将のみさが、佐伯熊太を差し置いて清左衛門に一目ぼれするのも無理はなく、それを知った嫁の里江が嫉妬するという上記したキャラクター設定にドンピシャリ嵌っています。


 「清左衛門残日録」は、仲代達矢の生涯の代表作であり、このドラマで彼の名は後世に残るのだろうと思います。

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本作は、キャストを一人ずつ全員紹介したいほど、レギュラーだけでなく、毎回のゲストも含めて俳優陣が非常に素晴らしいと思います。

〔 財津一郎 〕

清左衛門の気の置けない幼友達であり、隠居後の清左衛門にとっては藩の内実を知るための情報源であり、さまざまなエピソードにおいて盟友となる、現役の町奉行の佐伯熊太を財津一郎が演じており、仲代達矢以上に素晴らしい。

 「やめて、チョーだい」の昔から変わらぬ財津節が、ともすると聖人君子じみる本作全体に俗社会の空気を流し込み、しみじみとしたユーモアと味わい深い俗物ぶり滲み出しています。

 藩の実権が、反改革派の朝田筆頭家老から改革派の遠藤家老に移ろうという藩内の大騒動の中、ラインにあと一歩で乗り切れず、このまま万年町奉行で終わってしまうかもしれないというやりきれなさに、悠悠自適の清左衛門への尊敬とささやかな嫉妬も混じる、定年間近の中間管理職の複雑な心情を、絶妙な悲哀感を伴って演じています。

 この仲のよい初老の2人が、「涌井」で、女将のみさが作る愛のこもった料理(東北の寒さ厳しい夕刻、ふろふき大根がおいしそう)で酒を酌み交わす場面が毎度の見どころで、こんなトリオで酒盛りできたら本当に楽しい人生になるだろうと思ってしまいます。

 また、この見どころの毎度の場面が、最終回の清左衛門の深い哀しみを、見る側の心の底にまで伝えるための伏線にもなっています。


〔 南果歩 〕

嫁の里江を演じるのが可憐で美しい南果歩でした。

里江は、まじめ一徹の夫を愛し、夫からも愛されながら、その出世を願い甲斐甲斐しく家事をこなす一方で、元御側御用人でダンディな舅の清左衛門に、夫がときどき焼きもちを焼くほど惹かれており、亡き清左衛門の妻に対抗するかのように行き届いた世話をします。

清左衛門も、そんな嫁の里江には頭が上がらず、里江に小遣いを渡されながら「涌井」通いをします。

里江は、清左衛門がときどきみせる孤独な心の影に強く興味をもち、清左衛門の日記(残実録)をしっかり盗み読みしているのですが、肝心の清左衛門が、心の相談ごとは全て女将のみさに委ねてしまうのを知り激しく嫉妬します。

という、これもなかなか難しい役どころを、南果歩は軽やかに演じています。

里江が、清左衛門に、夫の出世のためにその上司に口添えをすることを願い出るエピソードがあります。

そのような口添えはたとえ何人からの頼みといえども引き受けないことを信条とする清左衛門が、他でもない里江からのたっての頼みということで、渋々引き受けて、上司の屋敷の前を行ったり来たりの逡巡をします。

そうこうするうちに、清左衛門の心を決定的に痛める出来事が起こり、結局、里江の願いは思ったように運ばないのです。

しかし、里江はその出来事を知ったとき、無理を押し通した自分の我儘を詫び、清左衛門の胸に泣き崩れます。

清左衛門に対する里江の思いに、見ている方も感極まってしまいました。

南果歩、素晴らしいです。


〔 かたせ梨乃 〕

「涌井」の女将のみさを演じたかたせ梨乃、これまた素晴らしい。

 田舎から女中奉公にでて、奉公先の主人に見初められて嫁いだものの、若くして後家となり、自ら料亭「涌井」を切り盛りする孤独な苦労人です。

「涌井」の常連客となった佐伯熊太が、みさを見せびらかすために清左衛門を連れてきたことが、みさにとって清左衛門との運命の出会いになってしまいます。

佐伯熊太にとっては清左衛門を連れてきたことを後悔するようなことになるのですが、里江の厳重な管理下にあることもあり、清左衛門とみさの関係はプラトニックで煮え切らないまま続きます。

ある冬の豪雪が吹きすさぶ晩、清左衛門が昔の友に対する悔悟の念から屋敷を飛び出し、すれ違いで屋敷に戻った里江と佐伯熊太が心配するのも知らずに、「涌井」に倒れこみます。

みさの介抱を受けて回復した清左衛門と、みさは、願ってもない二人だけの、幸せな酒盛りの夜を過ごします。

その晩、清左衛門は「涌井」に泊まります。

清左衛門が疲労で寝静まったのち、その寝床にそっと入り添い寝するみさと、寝たままの清左衛門との濃密な心の交錯が何とも切ない余韻を残します。

「清左衛門残日録」は、実は、清左衛門とみさとの美しくも哀しいラブストーリーであるともいえます。

かたせ梨乃は、不幸の影を持ちながらも、きっぷがよく、身分違いの清左衛門を思いながら、人生の荒波に翻弄されるみさそのもの、としかいえないほどに嵌り切っていて素晴らしいとしかいえません。


〔 佐藤慶/渡浩行 〕

清左衛門の若いころからの友でありながら(と、清左衛門は思っていた)、朝田筆頭家老側についたために、出世の道が閉ざされ、隠居後も零落したままの金井奥之助を、佐藤慶が演じています。

 金井奥之助は、己の生き方に筋を通す一方で、今も、友として訪れる清左衛門に対して、狂おしいほどに嫉妬します。

 この二人の、それぞれの人生を賭けた心の葛藤と、その葛藤を引き継いだ金井奥之助の息子の金井祐之進(渡浩行)と清左衛門の息子の又四郎との対立が、本作の太い縦糸を構成します。

 佐藤慶は出番が少なく、妻も出てしまった薄暗いあばら家で寝たきりになるような動きのない役まわりなのですが、佐藤慶の、過去の人生の苦渋がにじみ出る重厚かつ繊細な演技があって初めて本作の縦糸を構成しえたと思います。

息子の金井祐之進を演じた渡浩行も、腕が立つが故に朝田筆頭家老側の暗殺者に成り下がったうえ、逆に始末されそうになるという、俗世の流れに翻弄される若侍をうまく演じています。

 奥之助は、自分と同じ道を歩み始めている祐之進に心を痛め、清左衛門に「息子を頼む」と遺言を残します。

清左衛門は、自らをも暗殺しようとする祐之進を、亡き友の遺言通り守り抜きます。

 金井親子と清左衛門親子の間の人生を賭けた葛藤と、最後にお互いを受け入れるまでの、山あり谷ありのエピソードも、見る者の心を打つことになります。

 このエピソードは、本作の番外編となる「清左衛門残日録 仇討ち! 播磨屋の決闘」の伏線となっています。


〔 鈴木瑞穂 〕

長い間、藩の実権を握り、改革派に追いつめられる朝田筆頭家老を鈴木瑞穂が演じています。

鈴木瑞穂は、滝沢修、宇野重吉らと劇団民藝を支えてきた、バリバリのリベラル系俳優で、誠実な弁護士役などがぴったりなのですが、どういうわけか、権力欲に凝り固まった大物の悪役も重厚に演じることができる名優です。

 朝田筆頭家老は、清左衛門の正義の鉄槌によって失脚するのですが、権力に未練たらたら、復活するためにさまざまな悪あがきをします。

仲代達矢のこれまた重厚に振り下ろす鉄槌は、このくらいの名優を悪役に据えないと受けきれないと思います。


〔 山下真司 〕

藩で随一の使い手であり、清左衛門の護衛役でもある平松与五郎を山下真司が演じています。

平松与五郎は、隠居後の清左衛門が通う道場の師範代でもあるのですが、剣のたしなみ以外は、何の趣味もないまじめ一徹のほとんど人がいいだけの好漢で、清左衛門に仲人をしてもらい、出戻りの多美(喜多嶋舞)と夫婦になります。

互いに女心、男心のわからないカップルで、それが原因の山下真司ならではのユーモア溢れる夫婦ものエピソードがある一方で、朝田筆頭家老側の放つ暗殺者から清左衛門を幾度も助け、番外編「清左衛門残日録 仇討ち! 播磨屋の決闘」では男平松の重要かつかっこいい見せ場が用意されています。

私が山下真司を見たのは、「清左衛門残実録」が初めてでしたが、その後、「富豪刑事」で演じた鎌倉警部も面白く、とてもいい役者だと思います。


(4)プロデューサー(菅野高至)

「清左衛門残日録」は、軽重のバランスのとれたキャスティングが見事ですが、これを実現したスタッフ、特に、プロデューサーの菅野高至は、映画では到達できなかったTV時代劇を確立した人物として歴史に残ると思います。

〔 第一の功績 〕

菅野高至の第一の功績は、藤沢周平の原作を初めてドラマ化したことです。

従来、映画及びTVの時代劇は、滝沢馬琴(南総里見八犬伝)、中里介山(大菩薩峠)の古典や、海音寺潮五郎、子母沢寛、山岡荘八、山本周五郎、南條範夫、司馬遼太郎、池波正太郎、松本清張といった大家の原作によっていたのですが、映画時代劇の衰退と、TV時代劇の定番原作の安易なドラマ化の流れの中で、藤沢周平の原作は映画化又はドラマ化されないままでした。

天下レベルの権力者に繋がる枠組みをもつ従来の原作に比べて、東北の小藩を舞台に、藩に仕えるが、剣の使い手としてプロ意識みなぎる下級武士(清左衛門くらいが最高位の官僚経験者か)の人生の機微とミステリーの骨格を物語の主体とする藤沢周平原作は、映画化するには地味すぎるとの映画サイドの判断があったのかもしれません。

「腕におぼえあり」「清左衛門残実録」を見ると、企業勤めを中心とする今を生きる日本人の心情に近い舞台設定で、結構際どい男女関係など、従来の原作では描き切れなかった現代性があり、むしろTV時代劇の原作として適当だったことが理解できます。

また、主人公が剣の達人で、その剣の達人が関係する「秘剣**」などは、文字では想像することしかできないところを視覚化する楽しみがあること、ミステリーの骨格は時代劇との親和性が高いことなど、従来ながらの時代劇としての面白さは引き継がれています。

藤沢周平原作を先にTVでドラマ化されたことで、本家としてTV時代劇を引っ張ってきた映画時代劇は、TV時代劇の後塵を拝する状況に追い込まれたといってもよいと思います。

菅野高至は、「清左衛門残日録」以降も、藤沢周平原作の「蝉しぐれ」「秘太刀(ひだち) 馬の骨」「風の果て」をドラマ化し、さらに、北原亞以子原作の「慶次郎縁側日記」(私のTVドラマベスト10の第5位)もドラマ化しました。

〔 第二の功績 〕

菅野高至の第二の功績は、新しい時代劇ドラマの型を作り上げたことです。

主人公だけでなく、他の登場人物を主人公以上に丹念に描写して群像劇化することで、ドラマ全体を俯瞰する視点が設定されているように思います。

この手法は、「慶次郎縁側日記」でも踏襲しており、「清左衛門残日録」と「慶次郎縁側日記」のドラマ構造はほぼ同じです。

TVドラマ化から遅れること10年、2002年に至って、ようやく山田洋次監督によって藤沢周平の「たそがれ清兵衛」が映画化されましたが、山田洋次監督は、菅野高至の創造した以上のことは何も生み出していないように思います。

なお、「たそがれ清兵衛」は、真田広之、宮沢えり、田中泯の好演により、名作一歩手前までいきながら、ラスト5分で山田史観のようなものが突然提示されシラケ切ってしまいました。映画監督ってなんで客の求めるものを率直に提示しないのでしょうね。

ということで、菅野高至プロデューサーはTV時代劇に新しい道を切り開いたという意味で、黒澤明監督の「七人の侍」に匹敵する創作を行ったと思います。

〔 NHKの撮影技術 〕

 菅野高至の描いたTV時代劇のイメージを実現する上で、NHKの時代劇における撮影技術の高さは大きく貢献していると思います。

 モノクロビデオ撮影から出発したNHKの人情時代劇シリーズは、「清左衛門残日録」に至って、時代劇に不可欠な自然描写(NHKの自然ドキュメンタリーの雰囲気)や、室内撮影におけるセットデザインを実に美しくカラービデオ撮影しており、おそらく様々なノウハウの蓄積が生かされているものと思われます。このあたりの技術的解説をどなたかにしていただきたいと思っています。


(5)最近の仲代達矢

 昨年、仲代達矢へのインタビューを書き起こして、仲代達矢の映画人生を本にした「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」(PHP新書)の出版記念として、仲代達矢と著者の春日太一の対談が新宿紀伊国屋ホールで行われたのを聞きに行きました。

 舞台では、若手の春日太一がことの経緯を説明した後に、仲代達矢が舞台の対談席に登場したのですが、登場したとたんに、スターのオーラが燦然と輝き、スターとはなんと神々しいものかと感激してしまいました。

 さすがに真っ白でしたがふさふさの髪の毛と、新作映画のために伸ばしたぼうぼうのこれも真っ白な髭がダンディで、80歳を超えているとは思えないシャキッとした姿勢とガッシリとした体躯、声を発すれば、昔ながらのあの朗々とした仲代達矢の明瞭な語り口で、入れ歯による発声の衰えなどとは無縁でありました。

 対談終了後に、客との質疑応答があったのですが、50~60歳台と思われるご婦人方が、仲代達矢を前にしてポーとしてしまい、上ずった声で質問していたのが記憶に残っています。

(以上)

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